(その2)数学科卒が理系社会で上手く楽しくやっていくには
前回の記事(数学科卒が理系社会で上手く楽しくやっていくには - 数学科卒のものぐさナナコのブログ)のパート2です。
前回は、
「多くの人は数学は重要だと感じているが、実際何を生かせるのか、当の本人たちもわかっていないことが多いのではないか」
というお話でした。今回は、
「私(筆者)が経験した、工学系分野において数学が生かせた(と思った)例」を紹介します。
次回は「数学科からきて工学系で苦しんだこと」にしようかな…。
実際、数学をやっている人に「それは社会では何の役に立つの?」と聞いてしまい(もちろん質問者に悪意があるのではなく話の切り口にしようとしてくれただけ)、きちんとした答えが返ってこずにお互い変な空気になってしまった…なんてこともあるのではないでしょうか。
興味を持ってもらえたとのことなので、大変ありがたいと思うんですが、なかなか直接的に役立つという例は、工学系に比べれば格段に少ないのではないかと思います。
そこで今回は、やっぱり完全に具体的には言えないのですが、少しでも役に立った例をお伝えすることで、今現在数学をやっている皆さんへのエールとしたいと思います。
※ちなみに、毎回のように申し上げていますが、あくまで私の完全な主観なのでご了承ください。
私が工学系にきてから「数学科で学んでいたことが役立った」と感じたことを書いてみたいと思います。大きく以下の3つです。
(1)数学の知識
(2)数学的思考力・忍耐力
(3)話題作り
上から順にいきますね。
(1)数学の知識
これは言わずもがなですね。
例えばアルゴリズム的にすごく複雑な微分計算が必要になったとか、行列の演算を工夫しないといけないとか、そういう時に数学が得意だというのは非常に強いです。
数学自体に抵抗がないということ、またたとえ計算方法そのものを知らなくても、似た分野の計算方法を思い出したり、どの分野の文献を探せばよいのかをぼんやりとでも想像できたりするというのは、けっこうな強みだと思います。
そもそも他の分野ではそうないでしょうが、数学(というか数式?)にはいまだに「検索できない」「検索しにくい」という問題がついて回ります。
というのは論文中の数式などは依然としてテキストデータではなく図形データとして埋め込まれていたりしますから、検索時には自分で書き下す必要があります。そもそも初めて見る演算記号に対しては、何とかしてその読み方を見つけなければなりません。
さらに、その論文が英語で書かれていた場合、もちろん近年の翻訳技術はものすごい勢いで進歩し続けていますが、数式や変数を含むとその精度はガクッと落ちます。結局、自分で書き下さなければなりません。
結局、こうしたちょっとした面倒くさい壁があると、もちろん時間をかければ解決はできるんですが、よっぽど有用な技術であると確信できない限り「なんか数学的に難しい論文」という意識がついてしまいがちです。
そんな時に周りに数学をやっていた人が1人でもいれば、きっと「ちょっとこれ読んでみて」と頼みたくなることでしょう。
私は数学科卒が珍しい環境にいたので、こういったちょっとした依頼をもらうことが多く、そのたびに数学の活用先を知ることができ、とても楽しみにしていました。
もちろん知らない演算などもありましたが、けっこう、「どうやって調べれば良いか」の想像はついたりするんですよね。
(2)数学的思考力・忍耐力
これはどう名付けて良いのかわからなかったので、なんだかよく聞くような言葉を借りてきてしまいましたが、考え方についてです。
よく「問題は小さくしろ」とか言われますが、数学や、特に証明が好きな人はこれは得意なのではないかと思います。
問題が起きた時に、問題が起きるまでのプロセスを分解して、どこには問題がなくて、どこには問題があるのか、一つ一つ検証して記録していく作業は、数学の(算数の?)検算作業に非常に似ています。
どこまでが足場が固められた理論で、どこまでがまだ固められていないのか集中して考える力や、またその気力や忍耐力は、けっこう、強い人が多いんじゃないかと思います。
また、「ちゃんと背景を確認して、物事が成り立つ理由がわからないと気持ち悪い」という感覚は、自然と、慎重に調査や推論を進める注意深さにもつながっているようにも感じます。「いつ誰が見返しても理解・納得できるような書き方」が数学では求められていますが、そのような書き方の癖は、工学系の論文を書く時のみならず、小さな報告書1つ1つにも生かされることでしょう。
(3)話題作り
これは実はかなり美味しかったです。
おそらくこれを読んでいる皆さんは、周りに数学科卒の人が少ないでしょうから、数学好きとして1個キャラを確立することができるのではないかと思います。
この際、思い切り生かしてしまいましょう。
とにかく「好きな数字」とか「好きな定理」とか「好きな数学者」とか、聞いてもらえたら、ラッキー!と思って答えられるようにしておきましょう。
本当に数学に興味があって聞いてくれる人には本当に熱く語れるものを、
そして、ネタとして聞いてくれる人には、それなりに受けそうなネタを用意しておきましょう。
もちろん、このような会話になる前にある程度良い人間関係を築いておきましょう。
これがないと、ただの数学好きな、不気味でとっつきにくい人になってしまいます。
2019/09/17追加 :
かなり時期が空いてしまいましたが…その3を公開しました♪
良かったら読んでください。
(その3)数学科卒が理系社会で上手く楽しくやっていくには - 数学科卒のものぐさナナコのブログ